basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

自己成就的予言はどこにでもある -就活・マーケティング・貨幣-

長谷正人『悪循環の現象学 「行為の意図せざる結果」をめぐって』という本を読みながら、自己成就的予言について考えてみた。 この自己成就的予言という現象は、思ったよりも広く見られるようだ。もしかすると、「就活の激化」や「マーケティングによる流行…

感想:渡辺京二『逝きし世の面影』 かつての日本の文明との距離

江戸時代の日本がどんな文明を持っていたのか、を仔細にわたって描写した本。ただし、ありがちな「日本文化って素晴らしかったんだよ!」論とは一味違う。 ありがちな本だと「自分たちの先祖たちが持っていた文化としての日本文化」という視点をとってるが、…

保守的で常識を疑わない研究者と、彼らに対する心境の変化

大学に入って、研究者というもののイメージがずいぶん変わった。それまで研究者というのは洞窟に棲む修行僧のような存在で、森羅万象に明るく、世俗的な名誉や喜びとは全く無縁の、真理の探究だけを生きがいとする人々だと思っていた。 しかし、大学にいる研…

お役所は案外イノベーションに向いているのでは?、というくまモンの事例からのお話

最近くまモンが人気だ。地方自治体によるゆるキャラブームの火付け役といってもいい存在だ。熊本県と関係ないグッズすらたくさん登場している。このくまモンをダシに、イノベーティブなプロジェクトの生まれやすい環境を考えてみた。すると、お役所的組織は…

多体問題としての社会現象

昨日(http://basils.hatenablog.com/entry/2013/06/18/002410)の続き。3つ以上の現象間の相互作用について考えるべく、力学系における多体問題を見てみたい。 多体問題とは、「互いに相互作用する3体以上からなる系を扱う問題(ウィキペディアより)」であ…

「原因-結果」というモノの見方の妥当性について -「ロック・イン」という相互強化現象ー

複数の現象間の相互作用を、どう分析すればよいか、について考えてみた。社会はこうした作用に満ち満ちている。このような作用しか無いといってもよい。これを分析する際には、おなじみの2現象間の「原因-結果」というものの見方を放棄したほうがいいのでは…

特権性を意識しないことが特権性であるという不可思議について

今日知り合いの女性と話していて、とても面白いことに気づいた。それは、自らの特権性を意識していないことこそが、その人の特権性の如実な象徴だ、ということである。 彼女の実家では、夜となく昼となくクラシック音楽がかかっていた。彼女はそれらの曲の名…

「新しい概念は、それを生み出そうとして生まれたものではない」というパラドックスについて

革新的イノベーションと言われるイノベーションも、開発者たちにとってみれば実は漸進的なイノベーションの集大成なのではないか? 革新的イノベーション(丹羽, 2006)と呼ばれるナイロン・パソコン・カーナビなどは本当のところどのようにして生まれたのか…

概念の交換過程としてのモノの売買

モノを売買するというのは、ある概念と別の概念の交換過程である、と考えることもできるのではないか。「概念」といって悪ければ、概念が体化された物体だ。貨幣も概念である。というのは、貨幣が貨幣である所以は、人がそれを貨幣だと信じているためである…

現象の相互作用関係、トートロジー的関係をどうとらえるか?

社会科学の現象は、すべて因果関係と相互作用関係のネットワークの中にある。社会科学的分析では、その一部を切り取って、しかも因果関係の方向を一方向に限定して分析しているにすぎないのではないだろうか。 たとえば、藤本・安本(2000)『成功する製品開…

イノベーションとは結局何なのか?  -引き算的イノベーション観について-

イノベーションの見方には、足し算的イノベーション観と引き算的イノベーション観があると思う。今回はそのうち、引き算的イノベーション観の分析をしてみる。(足し算的イノベーション観と引き算的イノベーション観については、http://basils.hatenablog.co…

「現象の本質を理解するために、それを作ってみる」というアプローチについて

前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2013/06/07/004805)引き合いに出した、生気論についての講義。この講義で「おっ」と思ったのは、生気論についての命題を根拠づける、その方法である。そこで、まずは生気論について。 K先生は、「生気論は退却戦…

イノベーションとは結局何なのか?  -イノベーションは生命現象-

今日の授業に、生気論についてのレクチャーがあった。そこで他の学生と先生のやり取りをきいていて、ふと思いついたことがある。組織行動や製品開発過程を、生命のアナロジーで分析できるのではないか?平たく言えば、組織は生命体で、組織行動は生命活動だ…

就職したことが無い学生が考える、仕事を選ぶための判断基準

好きなことを仕事にしろ、とはよく言われる。あるいは、何か将来の目標をたててそれに向かった仕事につけ、ともよく言われる。しかし、これは本当にいいアドバイスだとは僕は思わない。 僕なら、毎日辛さを感じずに続けられることを仕事にしろ、と言いたい。…

『イノベーションのジレンマ』の観点からビッグデータと推測統計を考える

先日のゼミと授業で、ビッグデータに関して興味深いやり取りを耳にしたのでメモしようと思う。 1週間前ほどのゼミで、ゲストの方がこんなことをおっしゃっていた。その方は統計分析を行う仕事に就いているらしいのだが、昨今のビッグデータブームに辟易して…

概念創出のI/O比

新しい概念のインパクトを決める変数は、その概念のインプット/アウトプット比ではないか。つまり、概念へのインプットがより多く、アウトプットとしての概念がより簡潔であればあるほど、その概念のインパクトは大きくなるのではないか。 たとえばホンダに…

新しさの無限階段的性質について

普通の方法をとる限り、あるものの新しさは別のものの新しさによってしか説明されない。このことは、新しさとは何かを考える上で極めて重要だと思う。新しさとは何かを「普通の方法」では理解できない、ということが理解できるためである。 「概念の新しさ」…