basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

多体問題としての社会現象

 昨日(http://basils.hatenablog.com/entry/2013/06/18/002410)の続き。3つ以上の現象間の相互作用について考えるべく、力学系における多体問題を見てみたい。
 
 多体問題とは、「互いに相互作用する3体以上からなる系を扱う問題(ウィキペディアより)」である。具体例としては、二重振り子問題が知られている(動画後半は、2つ目の振子の先端の動きをトレースしたものである)。
 
 
 二重振り子は、こんな不思議な動きをする。これがどう振る舞うのかを、数式の変形によっては厳密には予測できないのである。
 
 
 たとえば太陽と地球のような二体問題であれば、厳密に解析的に解ける。すなわち、初期値が与えられたときに、数式の変形だけで両方の位置や動き方を確定できる、というような意味だ。しかし、ここに月が加わった3体問題、あるいはさらに星が増えた多体問題は、解析的に解くことはできない。これを解く、つまりある時点における位置を特定するためには、コンピュータによる数値解析(シミュレーションのようなものらしい)をするしかないとされる。
 
 さてここからは推測だが、現実の社会現象はすべからく多体問題的な性質を持っているのではないか。現実の社会現象は、3つ以上の現象が複雑に相互作用しあって生じる。そして、多体問題が解析的に解けないということと、3つ以上の現象間の相互作用を複数の「原因-結果」のペアに分解して分析できないということは、同値ではないだろうか?
 
 だとすれば、これらの相互作用のネットワークの中から一組の原因―結果を取り出すのは不自然だ。むしろ、各要因が現象をどう動かすかを複合的に考えなくてはいけない。
 
 たとえば、次のようなシミュレーションはどうだろう。社会の各現象に「引力」を持たせて、N次元空間内に配置する。N次元空間のある位置は、社会内における現象の「位置取り」に対応している。そして「引力」というのは、ある現象が周りの現象に与える影響力のことである。つづいて、時間経過につれて個々の「現象」がどう運動するかをシミュレーションする。そうすれば、複数の現象の影響力の合成や、現象間の相互作用、相互強化関係などをうまく分析できるのではないか。昨日の「ロックイン」現象も、「現象と現象がN次元空間内で接近する」というシミュレーション結果として理解できる。また複数現象間の相互作用も、それを複数の「原因-結果」のペアに分解することなしに、より現実に即した形で理解できるのではないか。
 
 もっとも、「引力」や「位置取り」などが具体的に何を意味するのかはイメージに止まり、モヤモヤしている。これをもっと分かりやすく整理することが必要そうではある。