basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

イノベーションとは結局何なのか? -新しい概念はどのようにして生まれるのか?-

 イノベーションとは、新しい概念が作られることだと思う。今までは、「新しさとは何か?」などについて考察してきた。しかし今日は少し角度を変えて、新しい概念はどのようにして生まれるのかを考察してみる。その際に、示唆に富んでいる事例を見つけた。それは、製品開発論の一分野である製品アーキテクチャ論だ。
 

 

 製品アーキテクチャ論の機能-構造間関係、モジュラー型とインテグラル型といった概念は洗練されており、多くの現象を分析するのに有用である。しかし、これらの概念は初めから洗練されていたわけではない。製品アーキテクチャ論の萌芽は、藤本・安本『成功する製品開発』にみられる。さらに遡れば、Clark & Fujimoto(1991)だろう。ここでは「機能の複雑さ」と「構造の複雑さ」という2つの軸で、製品を4タイプに分類している。しかし、肝心の両概念の定義が曖昧であり、そもそもこの二分法が適切かどうかも疑わしい。それでもなお、後年のアーキテクチャ論の核心ともいえる「機能」「構造」に、焦点が当てられている。つまり、アーキテクチャ論の原初的形態がここに出現しているのである。こうした原初的混沌が徐々に整理・体系化されていったことで、切れ味の鋭い概念群へと進化していったのではないだろうか。
 
 この例からは、新しい概念は原初的混沌から生まれると言えそうだ。原初的混沌においては、何が新しいのかさえ定かではない。しかし、徐々に混沌は秩序づけられていく。そして明確な形が現れたとき、人々はその真の新しさを実感するのだろう。逆に混沌を経ずに生み出された概念は、短期的には目新しく見えても、真に強靭ではないのだろう。