basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

イノベーションの本質は何なのか? -文化の劣化コピーは、同質化を進める②-

 
 製品アーキテクチャ論において、モジュラーとインテグラルという対立的な概念が登場してきたのは、最近のことである。こうした洗練された概念が出てくるまでに、さまざまな試行錯誤があった。
 
 製品のアーキテクチャという観点が明示されたのは、アメリカの経営学系のジャーナルではHenderson & Clark(1990) 'Architectural innovation :The reconfiguration of existing product technologies and the failure of established firms'(アーキテクチュラル・イノベーション:既存の製品技術の再編と、既存企業の失敗)という論文である。
 
 しかしこの時には、製品アーキテクチャとは何かが明示的に定義されてはおらず、製品コンポーネントの残余項のような扱いだった。
 
 つまり、「製品全体」のうち、「各製品コンポーネントの単なる寄せ集め」では説明できない部分が、便宜的に「製品アーキテクチャ」と総称されていたのである。ちょうど、「人間」のうち「人体の各部位の単なる寄せ集め」では説明できない部分が、その正体は相変わらず不明なままとりあえず「魂」と呼ばれているように。
 
 その後も、さまざまな試みがされてきた。そして、Ulrich(1995)'The role of product architecture in the manufacturing firm'(製造企業における製品アーキテクチャの役割)やBaldwin & Clark(2000)'Design rules: The power of modularity'(デザイン・ルール:モジュラー化の力)によって上記のような「あらまし」で説明できるほどに洗練され、さらに工程アーキテクチャ、組織アーキテクチャなどとの関連へと発展していったのだ。