basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

「情報の格差」と「遠隔地交易」でイノベーションを定式化する

 何らかの意味での「情報の格差・あるべき状態からの歪み」と「情報の格差を埋めるための移転活動(価格差から利益を得るための活動が遠隔地交易であるように)」という見方は、収益性の高い新規市場を見つけ、そこでどんな事業を展開するかを構想するうえで有用ではないか?
 
 つまり、「大きな情報の格差が生じているのが良い市場であり、その格差を埋めるための『交易活動』が良い市場での新事業展開である」というように定式化できないか?
 
 たとえば、「出会い系サイトでは、男と女、利用者とサイトの間に大きな情報格差がある。具体的に言えば、男と女はお互いが本当に信用できる相手なのか疑問を持ち、利用者はサイトの信頼性に疑問を持つ。これは、男と女相互、あるいは利用者とサイトの間に大きな情報格差がある状態だと言える。この情報格差を解消できれば、それは今以上に大きな事業に発展するのではないか?」などのような言い方ができるだろう。
 
 なぜこうしたことを考えたかというと、「情報の格差」という見方を導入することで、ある特定の種類のイノベーションの機会を見つけやすくなるのではないかと思ったためだ。それはおそらく、デマンドプル型のイノベーションの一種だろう。
 
 「イノベーションは顧客の潜在的ニーズから生まれる」とよく言われるが、こうした表現では「ではその『ニーズ』って結局何なの?」という肝心な問いに答えられない。一番知りたいことが、「ニーズ」というマジックワードでブラックボックス化されているのだ。そして、「ニーズがどこにあるかは、マーケティング調査と経験と勘を頼りにケースバイケースで探そう」という毒にも薬にもならない結論しか導かれてこなかった。
 
 そこで、「ニーズとは情報の格差を埋めたいと思う欲望だ」と定義すれば、「ニーズ」の正体が少しだけ分かりやすくなると思った。
 
 さらにこの定義が便利なのは、「ニーズ」と「流行」を区別できるためである。「流行」にしたがってニーズらしきものを見つけ、そのニーズもどきを満たす製品・サービスを提供していては失敗する。そうではなくて、「流行」とは離れたところにある「ニーズ」を見つけたいのである。そのためには、情報の格差でニーズを定義するのが便利だと思う。