basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

イノベーションとは結局何なのか?  -「概念」と「言葉」を区別する必要性-

 イノベーションとは、新しい概念を生んだり、概念同士の新しい組み合わせを生み出したりすることだと思う。

 

 しかしここで、「概念」と「言葉」は区別しなくてはならない。言葉になる以前の概念もあるはずだからだ。

 

 たとえば、トヨタの生産システムが「リーン・プロダクション・システム」と名付けられたのは、それが存在するようになってからかなり後のことだ。つまり、言葉は事後的に作り出されている。トヨタの生産システムは明らかにイノベーションであるが、それが一言で言い表される前から存在していたのだ。

 

 このように、言葉で捉えられている・捉えられていないに関わらず存在しているもののことを、概念と包括的に呼びたいと思う。この意味なら「実体」「存在」と呼んだ方が、より表現したい意味に近いかもしれない。しかし、貨幣や情報なども視野に入れるために、あえて概念と呼びたい。概念が、イノベーションを構成する本体である。

 

 概念は、潜在的には言葉で表すことができる。しかし、それは言葉で表されていなくても確かに存在しており、社会に影響を及ぼしている。経営学者が研究するまで、トヨタの生産システムの全貌は誰一人として知らなかった。トヨタ内部の人間でさえそうである。

 

 だがそうであったとしても、トヨタが品質・コスト・リードタイムの観点から見たときに強力な「裏の競争力」を持っており、トヨタの車を買う人がその恩恵を受けていた、という事実には変わりがない。

 

 もっと言えば、経営学者が研究してそれを「リーン・プロダクション・システム」と言語化し、主要な特徴を明確にしても、トヨタの生産システムの全貌をつかみ切れたわけではない。言語化できたのは一部分にすぎず、多くは依然として未知のままである。それでも、この未知の部分は確かに存在しているし、トヨタの生産システムを構成しており、トヨタの競争力に貢献しているのである。

 

 このように言語化されたか・されていないかにかかわらず存在しているのが、概念である。まだ言語化されておらず、将来言語化される可能性のある概念は、いわば潜在的な概念である。逆にすでに言語化されており、定義と特徴が明らかになっている概念は、顕在化した概念である。

 

 イノベーションでは、この両方の概念が生み出されるし、また機能している。しかし、イノベーションの過程を記述するときに残されるのは、顕在化した概念のみである。潜在的な概念は、たとえ実際にはどれほど重要な産物であっても、またどれほど重要な役割を果たしていても、忘れられてしまう。

 

次回はコチラ→http://basils.hatenablog.com/entry/2013/08/14/224425