basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

企業家の役割の本質は、結晶化作用である

 企業家の役割の本質は、結晶化作用である。企業家は、結晶化を引き起こす種結晶のようなものだ。
 
 種結晶自身は、とても小さい。しかし種結晶は、それが存在しなければ生成しなかったであろう大きな結晶が生まれるうえで不可欠のものである。
 
 結晶が成長するための環境は、整っているのだ。過飽和溶液がそれだ。過飽和溶液は、まだ満たされていないニーズと、それを解決できる手段が、そこらじゅうに立ち込めている状態である。
 
 そこに、企業家という種結晶が投入される。すると、ニーズと手段が急速に結びつき、企業が成長しはじめる。結晶がどんどん大きくなるのである。この成長プロセスを始動させるのが、企業家の役割である。
 
 技術系ベンチャーが行っているのは、新しい手段をつくり出すことである。これは言わば、過飽和溶液にさらに溶質を投入するようなものである。たしかに析出は生じやすくなるが、その度合いは種結晶を投入する場合には劣る。
 
 またきれいな結晶をつくるためには、大きいが形の崩れた種結晶より、小粒でも整った種結晶を使ったほうがよい。
 
 そして前者の結晶が、創業者にずば抜けた経験や能力があってもはっきりした方向性は定まっておらず、チームのまとまりにも欠ける企業。後者の結晶が、創業者にずば抜けた経験や能力がないが方向性がぴっしりと定まっており、チームが一体になっている企業である。
 
 前者の場合、たしかに立ち上がりは早い。もとの種結晶がある程度の大きさなので、それなりの大きさにはなる。しかし、きれいな結晶にはならない。できるのは、単にそれなりの大きさの結晶でしかない。
 
 後者の場合、立ち上がりに時間がかかる。種が小さいので当然である。しかし、ゆっくりではあっても着実に成長していく。その結果、きれいな結晶ができる。きれいな結晶であれば、成長に限りはない。