basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

高校の友人と、ものを作ることにした ~千本ノック的アイデア出し~

高校の友人と、物を作って売ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/02/02/003544)はクラウドファンディングサイトの品定めをした。日本で双璧をなす、CAMPFIREとREADYFOR?を比べてみたのである。その結果、この2つのサイトならCAMPFIREがより良さそうだということが分かった。
 
今回は、ひたすらアイデアの球出しをしてみる。本当に思いつきのようなものばかりだが、出してみないことには始まらない。下手な鉄砲はまず数を打たなければ。
 
・ハーブを使った目覚まし時計:今までの目覚まし時計は、不快な刺激で目覚めさせるもの。しかしこれだと、朝起きるのがますます嫌になる。不快な刺激で目を覚まさせるという発想は、何かが根本的に間違っている。また、起きたはいいけど止めてすぐ二度寝してしまうという問題も。要するに、今までの目覚ましの問題は
 
①不快
②装置を止めると効果が切れる
 
というもの。そこで、ハーブで目覚ましをできないか?これなら、朝起きるのが快適になる。また、起床予定時刻の30分前から充満させることで、眠りが浅いときに自然に起きられ、しかも装置自体を止めても香りは残り続けるので二度寝の心配もないのでは?
 
・苦しくない、電車の中でも蒸れない、じっとりしないマスク
 
・電車のなか、片手でも読書しやすい補助器具:読書の時、片手が塞がっていることは意外と多い。その筆頭が、電車の中だ。吊革につかまっていたり荷物を持っていたりすると、片手で本を読まざるを得ない。しかしこれが難題だ。持って、ページをめくり、そしてページを抑えないといけない。それをなんとか出来ないか?
 
・ポスト型ゴミ箱:ゴミ箱がポスト型なら、紙ゴミを捨てるときに抵抗感がなくなるのではないか?という単純な思い付き。
 
・空調設備を応用して、部屋で色々な空間を再現できないか?たとえば、部屋で草原の風を感じられたり、人工的で臭いのする冷風のかわりに心地よいそよ風を感じられたりしたら、ずいぶん勉強がはかどりそう。送風口にホースをつけて、それを色々な角度・位置に設定することで自由に空気を送れるようにしたい。
 
・自動火加減調節機能つきIHヒーター。達人の火加減をプログラムできる。達人の味を家庭でも!
 
・掃除機、腰を曲げなくても遠くを掃除できるようにできないか?
 
・セルフトレーナー。ぐずぐずしたり考えが堂々巡りしたり鬱っぽくなったり不毛なパニック状態になったりしたときに、それを脱出する手助けをしてくれる。ちょっとしたチャレンジへと背中を押してくれる。
 
・持ち帰ることなしに、その場で血液検査ができるキット
 
・スリッパと一体化した掃除機、あるいはスリッパの裏がゴミを吸着してくれて掃除がいらない。
 
・ある本の依拠している文献や関連文献を紹介してくれる読書案内サービス。興味が広がって飽きが来ず、かつ有機的な知識の繋がりを学べる読書の方法。
 
・口のなかに張る絆創膏。口内炎対策。
 
・佐川急便の荷物運搬用カートに足のせ台をつけて、キックボード的に荷物を運べるようにする。
 
・肌に塗るとポカポカして、寒さを感じなくなるクリーム。
 
・「自分がどれくらい集中しているか」が一目で分かるリストバンド。脈拍・発汗量などを測定して、集中度合を測る。集中できなくなると光ったり振動したりして、休憩を促してくれる。ムキになって同じことをずっとやりつづけたり、レポートの提出期限間近でずっと書き続けたりした結果、知らず知らずのうちにパフォーマンスが落ちていたという経験から。
 
ひとまずこれくらい出してみた。こうやって考えてみると、あまり「問題解決」に囚われない方がいいらしい。そうすると出てくるものがつまらなくなりがちだ。それよりまずは面白さを優先して、それがどんな問題を解決できるのか、と逆算してみたほうがいいのかもしれない。

高校の友人と、ものを作ることにした ~クラウドファンディングサイトの品定め~

高校の友人と、物を作ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/30/230447)は僕たちにとって身近な「論文を書く」という作業に焦点を絞り、どんな問題があるかを考えてみた。

今回からは、クラウドファンディングサイトの比較をしてみる。1月23日の記事(「ミニ株式会社としてのクラウドファンディングhttp://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/23/010440)では、クラウドファンディングの概要と、僕らがどう使っていきたいかを書いた。今回はその続きで、具体的にいくつかのサイトを見てみる。

まずは、日本で有名な2つのサイト、READYFOR?(https://readyfor.jp/)とCAMPFIRE(http://camp-fire.jp/)からだ。

READYFORの特徴を挙げると・・・

・方式は購入型。寄付や投資ではない。金銭以外でのリターンと引き換えに、支援をしてもらう。

・立ち上げは2011年4月、日本初のクラウドファンディングサイト。

・取扱額は最大。支援者数は約3万人。

・手数料は調達成功時のみ、調達額の17%。

・申請から掲載までの期間が、約1カ月。掲載から調達終了までの期間が、約1カ月~3ヵ月。

・成功率は7割程度。

・調達目標額は100万円~300万円

といったところだ。そしてプロジェクト特性としては、自治体やNPOが社会問題を解決するものが多い。地域密着的で、分かりやすい問題意識(復興支援・途上国支援・町おこしなど)のものが目立つ。また具体的な形のあるプロダクトは少なく、無形のプロジェクトや映像作品が多い印象だ。

それと対照的に、自己満足的なプロジェクトやクリエイティブ系のプロジェクトは少数で、しかもあまり好調でないようだ。また、斬新な問題設定をして今までにない製品を作るというリ・インベンション的な活動(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/25/004425)は皆無だった。

では、一方のCAMPFIREはどうか。特徴は・・・
 
・方式は購入型。
 
支援者数は、約3万5000人。
 
・手数料は調達成功時のみ、調達額の20%。
 
・申請から掲載までの期間が、約10日。掲載から調達終了までの期間が、7日~80日。
 
・成功率は(見たところ)90%以上。
 
・調達目標額は20~150万円程度。
 
そしてプロジェクト特性は、本当に様々だ。20近くものカテゴリーに分かれている。そのうち僕らの計画に近いのは、「プロダクト」「テクノロジー」「ビジネス」の3つだろう。これらのカテゴリーでは、切れ味の鋭い問題設定をしたもの、今までに無い解決方法を提案したものが目立つ。たとえば、非常食の定期宅配サービスyamory(http://camp-fire.jp/projects/view/161)、忘れ物をしなくなるsticknfind(http://camp-fire.jp/projects/view/675)、メッセージが届くとスマホが香りを噴霧するChatPerf(http://camp-fire.jp/projects/view/536)などだ。
 
これは、僕らのプロジェクトと相性が良さそうだ。
 
もしREADYFOR?とCAMPFIREのどちらかを選ぶなら、僕らは迷わず後者にする。最大の理由は、プロジェクト特性だ。こちらのほうが、僕らのやりたいことに近そうだ。
 
その他、CAMPFIREのメリットとしては、
 
・申請~掲載期間が短い
 
・成功率が高い:運営元からのサポートが強力な証と言える
 
ということがある。一方デメリットとしては、
 
・手数料が高い
 
・調達額が、比較的少額
 
・20近くもカテゴリーがあるということは、裏を返せばどれか強力なカテゴリーが1つあるわけでは無いということ:もっとプロダクトに特化したクラウドファンディングサイトがあるなら、そちらのほうが有望かもしれない。
 
ということがある。特に調達額がやや少なめなことには注意したい。
 
READYFOR?とCAMPFIRE以外のサイトという選択肢は、あるだろうか?まだ調べていないので何とも言えないが、おそらくナシ、だと思う。クラウドファンディングは単なる資金調達の場ではない。前宣伝の場であり、市場調査の場でもあるのだ。宣伝や市場調査のためなら、知名度の高いこれらのサイトの方が有利だ。
 
だから、よほどプロダクトに特化している・調達額が大きいなどの知名度の低さを補うメリットがなければ、この2つ以外という選択肢は無いかなと思う。一応は調べてみよう。
 
それにしても、両サイトに掲載されているどのプロジェクトも凄い。完成度やディテールの細かさに驚かされた。僕らには、まだ何もない。こういうブログを書いている時も、「僕らに本当にできるのだろうか?」と胃の底がザワザワする。あまり悩んでも仕方ないので、一歩ずつ、着実に前に進もう。夢を見続けるためには、まず夢を信じることだ。

高校の友人と、ものを作ることにした ~ありふれた活動のありふれていない問題を見つける~

高校の友人と、物を作ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/29/001054)は、参考になる本その3として、『東大式 世界を変えるイノベーションの作り方』を取り上げた。
 
今回は、「じゃあ具体的にどんなことをやろうか?」を考えてみた。計画の肝になる部分だ。
 
そもそも、どういう領域のことをやるのか?それを選ぶ基準はいくつかある。
 
①自分にとって身近で、
 
②ある程度の経験があり、
 
③問題を痛感していて、
 
④その問題がすごく大事な問題
 
というような領域だ。そこで今回は、「論文執筆」に関するモノを考えてみよう。上の基準との対応関係は、
 
①・②→僕達は大学生で、論文を読む機会が多い。また書く方についても、ゼミ論や卒論を書いたことがある。
 
③→論文を書くという作業は結構めんどくさい。しかも、不必要に面倒だ。まだ何が本当に問題なのかはよく分からないが、何か大きな問題があるような気はする。
 
④→論文を書くというのは、広く言えば情報を処理して新しい情報を生み出すという作業だ。この中には研究活動だけでなく、事業経営や読書など色々な活動が含まれる。論文執筆についての問題を解決できれば、色々な分野に波及するのではないか?
 
・・・という具合である。
 
まず、論文執筆はどんな活動からなるのか?細かく分けてみる。
 
・先行研究の整理
・文献探し
・アポイントメント取り
・インタビュー
・メモ取り
・メモおこし
・メモの整理
・構成づくり
・文献リスト作り
・メモの統合
・各パラグラフの執筆
・推敲
 
こんなところだろうか。
 
これらの活動のうち、とくに大きな問題がありそうなのはどこか?色々考えてはみたが、とくに大きい問題は、文献リスト作り・メモおこし・メモ取り・メモの整理にありそうだ。
 
①文献リスト作り
 
論文の終わりに、参考にした文献をズラリと並べる。これを書くのが意外と面倒だ。もちろん、Refworksなどの支援ソフトはある。しかし、OPACで検索して出てこない雑誌記事などの書誌情報は出力できない。
 
そこで、文献のタイトルを撮影するだけで書誌情報を検索し、所定の形式にまとめあげてくれる「モノ」があるといいのではないか?
 
②メモおこし
 
僕は経営学を専攻していて、よく工場見学に行く。そして、工場で見たこと・聞いたことをなるべく全部、手書きでメモしていく。
 
そうして出来上がったメモは、グチャグチャで、大事な情報が抜けていたりする上、欲しい情報を検索できない。
 
そこで、「メモおこし」をする。メモの中身をパソコンに打ち込みつつ、思い出したことを追記していくのだ。図もきちんと描きなおす。
 
これに、ものすごく時間がかかる。A4紙1枚のメモを完璧に起こし終わるのに、30分~1時間はかかる。1回の工場見学は平均して2~3時間、その間に10枚~20枚のメモをとるので、1回分のメモを起こすのに最低でも5時間くらいかかる。
 
これを、何とかできないか?
 
③メモ取り
 
文献を読んだときには、メモを取る。僕の場合はエバーノートを使うが、他のソフトや紙のカードを使う人もいるだろう。
 
どんな形式であれ、メモすることは2つだ。1つは、文献の内容そのもの。使えそうだと思った箇所をそのまま引っ張るのだ。短い箇所なら丸ごと書き写すし、長い箇所なら要約する。2つ目が、自分の考察。その箇所から何を思いついたのか、どうして使えそうだと思ったのか、などを書きとめる。この「考察」が、論文の骨組みになる。
 
このうち「考察」の方は、もう自分で書くしかない。でも、「内容」の方はもっと手軽にメモできないか?写経のように文献の内容を書き写していると、しばしば徒労感を覚える。
 
たとえば、ここにペンがあるとする。このペンで引っ張りたい箇所にマークを入れる。すると同時にそこがスキャンされ、OCRソフトでテキストデータに変換されたうえで、メモが自動生成される。あとはこのメモに、「考察」を書き加えるだけでいい。
 
④メモの整理
 
メモは取っておしまいではない。何度も見返したうえで、内容ごとに整理しないといけない。関連のあるメモをいくつか集めるとパラグラフができ、パラグラフを集めると章ができ、章を集めると論文になるのだ。
 
このメモ整理、よくやるのがタグ付けでの整理だ。1つのメモあたり3つくらいのタグをつける。紙カードを使う場合も、右上にタグ代わりのキーワードを書き留める。
 
でもタグには問題もある。必要なタグは最初には分からない・タグが増えすぎる・タグは違うのに関連のあるノートが実はある、というような問題だ。
 
タグより良い、メモ整理の方法はないか?
 
 
・・・これらのアイデアのうち、特に③と④のような「バーチャル(データ)とリアル(実物)を結びつけるための道具」というのは面白そうだ。他のアイデアにも応用できるだろう。
 
ただ正直な所、どれも「お役立ちグッズ」的になってしまいそうな感は否めない。「あればうれしいけど、無くても別に困らない」というものだ。効率性向上のためのもので、論文の質自体を上げるようなものではないのだ。「今までより短い時間で作業が済むようになりました。それで?」という感じがしてしまう。
 
せっかくやるなら、もっと根本的なことに取り組みたい気はする。論文執筆をより良くするには、一体何が必要なのか?
 
いずれにせよ、「論文執筆」に関しては、まだまだ「面白いモノ」を生み出す余地がありそうだ。引き続き考えてみたい。
 

高校の友人と、ものを作ることにした ~アイデアの頑健さ、AK47、i.school~

高校の友人と、モノを作って売ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/26/215028)は参考になりそうな本の2冊目として、クリス・アンダーソンの『メイカーズ』を取り上げた。日本とアメリカでは状況も違い、Kickstarterなど海外のサービスを利用するには英語の壁もあるとは思うが、とても刺激的な本だった。
 
今回は3冊目の本として、東京大学i.school編の『東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた』について。今までに考えつきもしなかったような問題を見つけたり、斬新な解決方法を探したりするときにとてつもなく参考になる本だ。筆者自身、i.schoolに出入りしていたことがある。
 
i.schoolというのは東大でイノベーション教育のために作られた組織で、週1回くらいのワークショップがメインの活動だ。様々な分野の大学院生が集まり、「働く母親と子どものよりよいコミュニケーションに向けて」「社会的企業をつくる」「エコ・エクスペリエンスのデザイン」といったテーマについてアイデアを生み出していく。
 
もとはと言えば、東大工学部の堀井教授と、博報堂イノベーション・ラボの田村氏が立ち上げた組織だ。両者がそれぞれ得意とする、理論的・構造的なアプローチと、感覚的・現場的なアプローチでうまくバランスが取れている。
 
この本やi.schoolでの活動で学んだことはいくつもあるが、特に大きかったのは「アイデアの頑健性(ロバストネス)」みたいなことだ。
 
イデアが頑健であることが、本質的な変化を起こすためには重要らしい。
 
よくブレストやアイデア出しの本を見ると、「確かに面白いアイデアだけど、だから何?」みたいなアイデアが羅列されている。いわば、華奢なアイデアだ。
 
もちろん、そういうアイデアを出すことが頑健なアイデアを出すうえで必要なことは否定しない。はじめから頑健なアイデアを出すのはムリだ。でも、それが最終目的というわけでは決してないと思う。
 
華奢なアイデアは、見かけはステキだ。一時的には盛り上がる。でも、実現へのイメージを全く持てなかったり、現実に使われている場面を想像できなかったり、実現したからと言って何が変わるわけでもなかったりする。
 
たとえば、僕が前にいた学生団体では、「面白いことをやっている団体を1,000個くらい集めて学生博をやろう」みたいなことをやっていた。
 
でも、今にして思えば「1000団体集めてイベントやって、で何?」という感じである。そもそも実現イメージが持てないし、実現してどうなるんだ、それで自分たちは満足なのか?
 
それではダメなのだ。
 
では頑健なアイデアとは何か?
 
ちょっと飛ぶが、「華奢」と「頑健」のイメージを持ってもらうためにアサルトライフルの話をする。
 
戦後生まれの2大アサルトライフルと言えば、M16とAK47だろう。M16はアメリカの天才銃器設計者、ユージン・ストーナーが開発した銃で、現在も米軍に使われている。一方AKはソ連の設計者、ミハイル・カラシニコフが設計した銃で、今や世界中で使われている。テロや途上国での紛争、イスラム原理主義と結びつけられる、何かと評判の悪い銃だ。
 
この両者、設計は対照的だ。
 
M16は当時珍しかったアルミ合金やプラスチックを多用しており、本体も薄い。レシーバー部の厚さが2センチほどしかない。「お姫さま銃」とも呼ばれるほどだ。
 
この銃はベトナム戦争時にはじめてつかわれたのだが、高温多湿の気候や手入れ不足のせいで作動不良を頻発した。ちょっと砂ぼこりや火薬カスがたまっただけで動かなくなるのである。
 
一方AK47は、とにかく信頼性と手入れのしやすさを重視している。ボルトが数百グラムもあり、簡単に分解でき、加工技術の低い国でも問題なく作れた。多少手入れを怠ろうが、砂嵐に遭おうが、弾丸が曲がっていようが、平気なのである。
 
そしてM16が「華奢な銃」で、AK47が「頑健な銃」だ。
 
こういう頑健さが、アイデアにも必要ではないか。単純で、多少の障害には動じず、広く普及する可能性がある、そういう頑健さだ。
 
頑健なアイデア(というよりプロジェクト)の代表例が、TEDee(http://tedeejapan.com/http://d.hatena.ne.jp/elm200/20111118/1321605725)だ。学生数人が立ち上げた。
 
TEDeeが解決しようとしているのは、「TOEICで800点以上を取れるのに、機会がないせいで英語のスピーキング能力が身につかない人が大勢いる」という問題だ。
 
そして解決方法が、「みんなで集まってTEDを見て、それについてディスカッションをする」というもの。単純極まりない。
 
でも考えてみれば、英語を話すのに高い学費を払って英会話学校に行く必要は無い。「場」があればいいのだ。TEDeeはその「場」を提供している。
 
TEDeeは主張する。「TOEICで800点以上取れているのに英語を話せない人は、日本に数十万人いる。彼らがみんな英語を話せるようになれば、何かが変わるはずだ。」
 
僕はTEDeeの紹介スライドを初めてみたとき、ショックを受けた。学生でもこういうことができるのか。こんな単純なことに、なぜ誰も気づかなかったのか。必要なのは資金でも技術でもなく(TEDeeには会計係すらいない)、自分たちなりの「問題」なのだ。
 
ようは、頑健なアイデアというのはこんな特徴を持っている。
 
・問題から解決策の論理的なステップ数が少ない:「話す場がない→じゃあその場を作ろう」。わずか1ステップ。
 
・解決策が単純:「TEDを見て話すだけ」。なんて単純なんでしょう。
 
・当初の見積もりに多少誤差があろうと、その良さが消えない:「TOEICで800点以上取れているのに英語を話せない人」が実際には数十万人でなく数万人だろうと、「何かが変わりそう」という感じは消えない。
 
・「言われてみればその通りだねえ」と多くの人がうなずいてくれそう:僕はうなずいてしまった。
 
こういうAK47的頑健さをもつアイデアを生み出す方法を、i.schoolを通じて学べたのだ。
 
動機のないテクニックは空しい。でも、テクニックのない動機はただの妄想だ。動機とテクニック、どちらも必要だ。i.schoolの方法は、そのうちのテクニック面を強めるうえで大いに有意義だと思う。

高校の友人と、ものを作ることにした ~『メイカーズ』を読んで~

高校の友人と、物を作って売ることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/25/004425)は参考になりそうな本として、三品和広『リ・インベンション』について書いた。今回は引き続き、クリス・アンダーソンの『メイカーズ』について書こうと思う。
 
『メイカーズ』は言わずと知れた、メイカーブームの火付け役になった本だ。日本では2012年に刊行されている。
 
この本は「メイカー」について色々な側面から書いているが、ここでは参考になる点を2つ挙げたい。
 
①「モノのロングテール
 
ビットの世界、つまりデータ化できる出版・放送・通信・コンテンツ産業で、ロングテール現象が起こったのは周知のことだ。それと同じことが、アトムの世界つまり実体を持ったモノの世界でも起ころうとしている。
 
これまでアトムの世界の品揃えが限られていたのは、
・大量生産に見合わない
・大量流通に見合わない
・消費者の目にとまらない
 
という3つの壁があったからだ。しかし今や、2つ目と3つ目のボトルネックはほぼ解消された。あとは1つ目だけだ。
 
そして「大量生産に見合わない」というカベも、需要と供給の両面から解消されつつある。まず需要については、ウェブによって「拡散した需要」を集約できる。1つの実店舗に置くには需要が少なすぎても、世界中の需要を集約すればそれなりの数を見込める。
 
つまり、世界中の市場を相手にすることによって、かえって個人レベルでのものづくりはやりやすくなるのだ。逆説的なことに。
 
そして供給側でも、アイデアをデジタルデータの形で表現する各種ツールはもちろん、その先のプロセスも個人に開かれつつある。設計データと資金さえあれば、誰でもウェブベースの製造サービスを利用できるようになったのだ。製造業が「クラウドサービス化」しつつあり、それを生産規模に関わらず使えるようになったとも言える。
 
②価格設定について
 
無理に低価格で製品を売ってはいけない。それなりの利益をあげないと、持続できないのだ。自分たちと小売業者の両方にそれぞれ50%の利益を確保しようと思えば、少なくとも作るのにかかったコストの2.3倍(1.5×1.5倍)の価格をつけないといけない。
 
自分たちに50%の利益というのは、多すぎる気もする。しかし、販売が拡大する前には予想しなかったコストが生じるのだ。掛ける予定のなかった保険、顧客サポート、予想外の返品などだ。これに対処するには、思った以上の利益が必要なのだ。
 
それに、はじめにつけた値段を上げることはできない。はじめに適正価格をつけないと、商品を作りつづけられなくなり誰もが損をするのだ。
 
・・・これら2つを、方針のような形にまとめてみる。
 
・初めから世界中を相手にする。
 
・拡散した需要を集約できるので、需要がどれくらいありそうかは気にしなくていい
 
・製造・販売のためのツールは借りられるようになりつつある。だから借りられない物である「自分たちの計画・アイデア」に注力すべし
 
・販売に漕ぎつけるまでには、無数の細かい意思決定がある。価格設定もその一つ。そのどれか一つでもミスをすれば、商品化はできない。だから、適切なタイミングで、適切なアドバイスをもらわないといけない。
 
こんなところだろう。『メイカーズ』は本当に色々なことが書いてある本だから、折を見て読み返したい。
 
次回は『東大式世界を変えるイノベーションのつくりかた』。僕らの計画で最重要の「解決したい問題」の見つけ方について、この上なく参考になる本だ。

高校の友人と、ものを作ることにした ~『リ・インベンション=再発明』という苦肉の策~

高校の友人と、ものを作って売ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/23/010440)は、クラウドファンディング基本的な特徴や、僕たちにとってのメリットについて書いた。そこで今回は、各クラウドファンディングサイトを比較しみよう。
 
・・・というつもりだったのだが、やっぱり別のテーマについて。資金調達という大事なイベントだ。せっかく比較するなら、きちんと調べてからにしたい。というわけで、これについてはジワジワと調べていって後日まとめて書こうと思う。
 
それで今回はどうしようか。実は最近、友人の大事な試験のために大きな動きは無いのである。試験の終わる2月半ばから、本格的に動くつもりだ。でも動きが無いということは、ブログのネタにも困るということである。
 
そこで苦肉の策というわけでは決してないのだが、このプロジェクトの参考になりそうな本を何冊か挙げて、どの点を参考にしたいか書いてみたい。取り上げるのは、三品和広『リ・インベンション 概念のブレークスルーをどう生み出すか』、クリス・アンダーソン『メイカーズ』、そして東京大学i.school編『東大式世界を変えるイノベーションのつくりかた』の3冊だ。
 
まずは、三品和広『リ・インベンション 概念のブレークスルーをどう生み出すか』について。この本は神戸大学経営学部の先生とそのゼミ生が書いた本で、「リ・インベンション」というコンセプトを提示している。
 
「リ・インベンション」は文字通り「再発明」のことで、これまで当たり前とされてたモノを素朴な視点で見直し、それを根底から作り変える活動のことだ。事例として9つの製品が挙げられている。その中でとくに参考になりそうなのが、ホヴディング・レボライツ・スマートペンの事例だ。
 
まずホヴディングとは、「見えない自転車用ヘルメット」だ。発明者はスウェーデンの2人の大学生。スウェーデンは自転車大国で、自転車の転倒事故による死者が多い。しかし普通の自転車用ヘルメットは大きくてかさばり、不恰好だ。ホヴディングはそうした問題に着目したのだ。そして、首に巻くスカーフ型の本体から、いざという時にエアバッグのようにヘルメットが飛び出すようにしたのである。
 
つづいてのレボライツは、「そっぽを向いた自転車用ライト」だ。開発したのは、NASAと医療機器メーカーでエンジニア経験のあったケント・フランコヴィッチ氏。彼は、自転車のライトがハンドルバーについていることに疑問を持ち、交通事故の原因を調べてみた。すると分かったのは、側面視認の重要性だった。そこで彼は、前や後ろを照らす今までのライトの代わりに、タイヤ側面を光らせて横を照らせるようにしたのだ。これなら、自転車に横から近づく車からも見えやすい。
 
最後のスマートペンは、録音・再生機能付きのペンだ。単に話の内容を録音・再生するだけではない。ペンでノートの一部をタッチすると、その箇所のノートを取っていたときの録音内容が自動的に再生されるのだ。たとえば「ノートのこの箇所で先生が何て話していたか聞きたい!」と思ったら、そこをタッチするだけでいい。巻き戻し・早送りといった手間がいらないのだ。
 
これらの事例で参考になりそうなのは、次のような点だ。
 
①シンプルな問題を解決する
 
どれもコンセプトはとてもシンプルだ。聞けば何が問題で、それをどう解決するのかがすぐ分かる。「これは大事な問題だなあ」という気がする。
 
間違っても、有りもしない問題を勝手にでっちあげたり、複雑でうんざりするような解決策だけは取らないようにしたい。
 
②「化石」と「ハイテク」の組み合わせ
 
リ・インベンションの対象は、昔からあるものばかりだ。自転車用ヘルメットにライト、ペン。他には台所用品や扇風機などもある。
 
そうした化石化した商品に、ハイテクを組み合わせている。たとえばホヴディングなら加速度・ジャイロセンサー、高強力ナイロンなど。スマートペンなら手書き文字読み取り技術、小型カメラ、高感度マイクなどだ。
 
つまり、一見化石化してイノベーションの余地のなさそうな商品だからこそ、ハイテクによって「化ける」可能性があるのだ。
 
③コンセプトは細部に宿る
 
コンセプトを徹底すると、製品の隅々にまで反映される。そのためには、数年単位という時間がかかっている。ホヴディングでは7年、レボライツで2年以上、スマートペンでは4年だ。
 
そしてコンセプトが徹底されると、他社の類似品にも負けなくなる。一見似ていても、「徹底度の違い」のようなものは露見してしまうためだ。
 
④柔軟な資源調達・パートナー探し
 
3つの事例とも、とても柔軟に資源やパートナーを探している。スマートペンでは、中核技術たる小型カメラや手書き文字の変換ソフトまで、社外からライセンス導入しているのだ。
 
またパートナーに関しては、ホヴディング社の事例が参考になる。彼らは大学生と言う何も持たない身だったからこそ、様々な相手と協力できた。エアバッグメーカーのアルバ・スウェーデン社と協力して安全実験を、スウェーデン交通研究所と協力して事故発生時の動きのデータ化をしたのだ。
 
ではもっと具体的には??いくつか方針めいたものを書き残しておきたい。
 
・「問題」と「解決策」のセットが命
・実感の湧く「問題」を設定する。僕らは大学生だから、大学生にとっての問題ならすごく実感があるだろう。
・数年かけても良い、と思えるような分野・コンセプトを見つけ出す
・意識的に、ハイテクとの組み合わせを妄想してみる
 
こんなところだろうか。後の2冊については、また次回以降で書こうと思う。

高校の友人と、ものを作ることにした ~ミニ株式会社としてのクラウドファンディング~

高校の友人と、ものを作って売ってみることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/21/003218)は、資金調達の方法について書いた。僕らが使えそうなのは自己資金・ベンチャーキャピタルやエンジェルからの投資・事業会社からの投資・クラウドファンディングだ。そして前回は、はじめの3つについて書いた。まずは自己資金でプロトタイプまで、というのが有望そうだ。
 
そして今回は、本命のクラウドファンディング。最近では資金集め以外の用途にも使えるらしい。
 
クラウドファンディングとは、文字通り「クラウド」から「ファンディング」してもらう資金調達の方法だ。つまり、不特定多数の個人から少額ずつ資金を集められる。それでいて金額は多くて数百万円と、自己資金より一桁多い額の資金を集められるのだ。アメリカではKickstarter、日本だとCAMPFIREやREADYFOR?などが有名だ。
 
具体的には、以下のようなプロセスを踏む。
 
①自分たちが作りたい製品・サービスをアピールするもの(文章・写真・動画など)を作る:僕らの場合で言えば、プロトタイプ・コンセプト・そこに至るまでの流れ・活動記録など。モノを制作する他のプロジェクトを見ても、プロトタイプまでは作っているようだ。
 
②調達の期限と目標金額を設定し、公開する:期限までに目標金額を超えた額が出資されれば、その全額を受け取れる。しかし目標金額に少しでも届かないと、1円も調達できない。All or nothingである。目標金額は高すぎるといけない。高すぎると、そもそも目標金額に届かないのだ。しかし低すぎると、今度は開発資金が不足してしまう。
 
③プロジェクトの趣旨に賛同した人が、少額(1,000円~5000円くらい)単位で投資する。投資の見返りとしては、完成品を送る・出資者として名前を公開する、などが一般的だ。
 
④目標金額以上が集まれば、全額を受け取れる。
 
・・・という感じである。他にも事後報告をしたり、出資金の用途を予告したりといったこともする場合がある。
 
僕らとしては、さらに突っ込んだ使い方をしたい。たとえば・・・
 
・活動記録をブログにのせておき、クラウドファンディングのサイトからのリンクをはっておく:資金を出す側にとって僕らは、赤の他人だ。赤の他人に資金を出す条件は、「面白さ」と「信用」だろう。
 
そもそもプロジェクトが面白くて共感できなければ、お金なんて出す気になれない。しかし単に面白くても、相手が信用できないとダメだ。資金を持ち逃げされたら、たまったものではない。もちろんクラウドファンディングのサイト自体にも、こうした信用性を担保する仕組みがあるのかもしれない(これから調べてみる)。
 
しかし、それ以上のものを僕らが提供できればなお良い。そしてブログの活動記録は、「面白さ」と「信用」の両方に効いてくる。限られた長さの文章や写真だけでは伝わらない物が、ブログでは伝えられるはずだ。紆余曲折やネガティブな部分も全部知っておいてもらいたい。
 
そして、それなりの期間にわたって活動してきたこと自体が、「信用」につながるだろう。もちろん、全く活動していないのに嘘八百をブログででっちあげることができないわけでは無い。でも、そんな面倒をあえてする暇人なんていないでしょう(^^;)
 
・1か月ごとに、資金の使用状況と今後の予定をブログで報告する:これは、上場企業ならどこでもやっていることだ。有価証券報告書株主総会。ちょっと大げさかもしれないが、クラウドファンディングは株での資金調達とそっくりだと思う。もとはと言えば「株式会社」という仕組みも、不特定多数から小口で資金を集めるためにできたものだ。
 
それに、せっかく資金の出し手の方とコミュニケーションを取れるのだ。顔の見える運営を心掛けて、協力してくれた方もともども楽しくなれるようなプロジェクトにしていきたい。
 
僕らがクラウドファンディングを使うメリットは、いくつかある。調達額・宣伝・テストマーケティングだ。意外と資金調達以外のメリットが馬鹿にならない。
 
①調達額:学生たる僕らの自己資金なんて、微々たるものだ。クラウドファンディングの調達額は、VCやエンジェルなどに比べれば少ないが、僕らにとっては十分すぎるくらいの額。うまくいけば。
 
②宣伝:クラウドファンディングのサイトは、多くの人が見る。そこに「ブース」を設けるというだけで、自力ではなかなか難しい宣伝の機会になるのではないか。
 
③テストマーケティング:僕らが試行錯誤して何か作ったとしても、それが全くウケないものならしょうがない。しかしクラウドファンディングを試すことで、「ウケるかどうか」の判定が手軽にできるのだ。資金調達がスムーズにいけば、それは「ウケた」ということだ。希望が持てる。逆に資金が調達できなければ、それは「ウケなかった」ということ。ダメな案にすぐ見切りをつけられるのだから、これも悪くないことだ。
 
では、それぞれのサイトにはどんな特性があるのだろうか。次回は、それを調べてみたい。