basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

高校の友人と、ものを作ることにした ~『メイカーズ』を読んで~

高校の友人と、物を作って売ることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/25/004425)は参考になりそうな本として、三品和広『リ・インベンション』について書いた。今回は引き続き、クリス・アンダーソンの『メイカーズ』について書こうと思う。
 
『メイカーズ』は言わずと知れた、メイカーブームの火付け役になった本だ。日本では2012年に刊行されている。
 
この本は「メイカー」について色々な側面から書いているが、ここでは参考になる点を2つ挙げたい。
 
①「モノのロングテール
 
ビットの世界、つまりデータ化できる出版・放送・通信・コンテンツ産業で、ロングテール現象が起こったのは周知のことだ。それと同じことが、アトムの世界つまり実体を持ったモノの世界でも起ころうとしている。
 
これまでアトムの世界の品揃えが限られていたのは、
・大量生産に見合わない
・大量流通に見合わない
・消費者の目にとまらない
 
という3つの壁があったからだ。しかし今や、2つ目と3つ目のボトルネックはほぼ解消された。あとは1つ目だけだ。
 
そして「大量生産に見合わない」というカベも、需要と供給の両面から解消されつつある。まず需要については、ウェブによって「拡散した需要」を集約できる。1つの実店舗に置くには需要が少なすぎても、世界中の需要を集約すればそれなりの数を見込める。
 
つまり、世界中の市場を相手にすることによって、かえって個人レベルでのものづくりはやりやすくなるのだ。逆説的なことに。
 
そして供給側でも、アイデアをデジタルデータの形で表現する各種ツールはもちろん、その先のプロセスも個人に開かれつつある。設計データと資金さえあれば、誰でもウェブベースの製造サービスを利用できるようになったのだ。製造業が「クラウドサービス化」しつつあり、それを生産規模に関わらず使えるようになったとも言える。
 
②価格設定について
 
無理に低価格で製品を売ってはいけない。それなりの利益をあげないと、持続できないのだ。自分たちと小売業者の両方にそれぞれ50%の利益を確保しようと思えば、少なくとも作るのにかかったコストの2.3倍(1.5×1.5倍)の価格をつけないといけない。
 
自分たちに50%の利益というのは、多すぎる気もする。しかし、販売が拡大する前には予想しなかったコストが生じるのだ。掛ける予定のなかった保険、顧客サポート、予想外の返品などだ。これに対処するには、思った以上の利益が必要なのだ。
 
それに、はじめにつけた値段を上げることはできない。はじめに適正価格をつけないと、商品を作りつづけられなくなり誰もが損をするのだ。
 
・・・これら2つを、方針のような形にまとめてみる。
 
・初めから世界中を相手にする。
 
・拡散した需要を集約できるので、需要がどれくらいありそうかは気にしなくていい
 
・製造・販売のためのツールは借りられるようになりつつある。だから借りられない物である「自分たちの計画・アイデア」に注力すべし
 
・販売に漕ぎつけるまでには、無数の細かい意思決定がある。価格設定もその一つ。そのどれか一つでもミスをすれば、商品化はできない。だから、適切なタイミングで、適切なアドバイスをもらわないといけない。
 
こんなところだろう。『メイカーズ』は本当に色々なことが書いてある本だから、折を見て読み返したい。
 
次回は『東大式世界を変えるイノベーションのつくりかた』。僕らの計画で最重要の「解決したい問題」の見つけ方について、この上なく参考になる本だ。