basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

コールセンターのアルバイトを徹底的に振り返る ②

 前回に続いて、コールセンター業務について。
 
 休憩時間は、午前に10分休憩が1回、昼時に1時間休憩が1回、午後に30分休憩と10分休憩が1回ずつ。朝9時から夜9時の12時間の勤務にしては、少なすぎるように見える。
 
 しかし、実際に話している時間は勤務時間の半分ほどで、残りの時間はほとんど「着信待ち」のため休んでいる。また、トイレ休憩は随時とることができる。そのため、数字上の見かけほどは過酷ではない。
 とはいえ大変なのは事実で、数時間ぶっとおしで勤務すると集中力が低下する。そうすると、記録漏れ(有権者数、回答者プロフィールなど)が多くなるらしい。
 
 また、「ダラダラやって体力を温存しよう」というインセンティブが働くため、回答後の事後処理や留守電・FAXの番号にヒットした時の処理をわざとゆっくりやるようになる。すると、ただでさえ低い時間効率がさらに低下する。
 
 ただでさえ低い時間効率、と書いたが、実際のところどれくらいなのか?
 
 作業時間の内訳をみてみると、「着信待ち」の時間が半分ほど、留守電やFAXに対応する時間が1割ほど、相手につながってもオープニング段階で断られるケースで費やす時間が1割ほどで、実際に相手から質問に答えてもらっている・対象者の情報を聞き出している時間は残りの3割ほどだと思う。そのため、正味の作業時間比率は3割ほどしかない。
 
 この時間効率を改善できれば、休憩時間も増やせ、現状より早く目標数を達成でき、したがって作業時間を減らせると思う。
 
 その結果、休憩をほとんど入れずに2日かけてやっていた作業を、休憩を頻繁に入れて1日で済ませられるようになるかもしれない。休憩を増やせば、「ダラダラ作業」を減らすことも見込める。
 
 そのほうが、賃金支払額が減り、また同じ時間働いてもより疲れが少ないため、派遣先と雇用者の双方にとって好都合なのではないか。絵空事かもしれないが・・・
 
 そのためには、留守電やFAXなどの機械音声を自動で判別して弾くようにする・以前のアンケート時にヒットした電話番号を再利用する、などの改善策が考えられそうだ。
 
 応対の仕方が標準化されていないことも、改善できるポイントだ。
 
 たしかに、話す内容のマニュアルや、標準的なフローチャートは用意されている。しかし、話すときのコツや心構え、回答するかどうか迷っている顧客を一押しするときのノウハウなど、ベストプラクティスを移転するべき動作はまだまだある。
 
 そうすれば、目標数達成までの時間を短縮できる。研修時間をあと1時間増やして、こうしたことをレクチャーするだけでも、オペレーター一人当たりの時間当たり回答数はだいぶ増えるのではないか。
 
 つづいて、データの質について。取れるデータは新聞の世論調査に使われるが、様々な欠陥がある。
 
 まず、回答者はほとんど高齢者、とくに女性の高齢者になる。
 
 回答してもらうには、電話に出てもらい、かつ回答を承諾してもらうことが必要になる。電話に出るのは、主婦と高齢者がほとんどである。しかし主婦は電話には出るが、忙しいといって断られる。男性の高齢者も、面倒くさがって断ることが多い。
 
 すると、回答者の多くが「はい、はい」と答え続ける女性の高齢者ばかりになる。20代、30代はほとんど外出中である。そして高齢者には自民党支持者が多いので、とてもバイアスのかかった結果になる。回答者の7割くらいが、自民党を支持していたと思う。
 
 また、都会より地方の人の方が、回答に協力してくれやすい。僕が担当したのは千葉県だったが、千葉県はなかなか目標回答数に達しなかった。それに対して、群馬県や長野県は回答数が順調に伸びていた。隣りの人の話では、岩手県などはとても協力的だったそうだ。
 
 その結果、地方には保守的な自民党支持者が多いので、自民党バイアスがさらに強化されることになる。新聞の紙面では、回答者の年齢分布や居住地分布は公開されない。しかし、これらのバイアスがかかっていることには十分留意すべきだ。
 
 さらに、アンケートの質問の際にも問題が生じる。
 
 本来、アンケートの際は平等性を担保するために、質問を一字一句も変えずに読み上げなくてはならない。しかし、時間短縮のため、あるいは回答者の機嫌を損ねないために、質問を省略したり改変したりすることがしょっちゅう行われる。
 
 回答者に途中で切電されるよりは、なだめすかして最後まで回答してもらいたい、と思うのが人情である。
 
 そのため、アンケートの平等性・正確性が損なわれる。アンケートは本来、質問の順番や、「重要」か「大切」かという些細な語句の違いで結果が大きく変わる、とてもデリケートなものである。しかし、そうした作成者の意図は、現場のさじ加減によって、実現されないことが多い。
 
 もっとも、新聞社の作成者がどの程度こうしたデリケートさに配慮しているかは分からない。別に大した配慮もなしにアンケートを作っているのだとすれば、作成者もオペレーターもお互い様ということになろうか。