basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

高校の友人と、ものを作ることにした ~「石のスープ」を目指す~

高校の友人と、ものを作ることにした。前回(http://basils.hatenablog.com/entry/2014/01/11/004827)は知り合いの方からいただいたアドバイスと、それへの対応について書いた。
 
アドバイスをいただいた結果、どうも「何を・どのようにやりたいのか」をもっとちゃんと考える必要がありそうだと分かった。そこで今回は、それについて今まで話し合ってきたことを書こうと思う。
 
僕らが話し合って1つ決めたのは、「大義名分のあることをやりたい」ということだった。単にお金が儲かればいいとかではなく。せっかくやるなら「いいこと」をしたいというごく単純なことだ。
 
僕らのような学生が何かを作るとき、まず最初に考えるのは「自分たちに何ができるのか?」だと思う。そしてその製品なりサービスなりがどういう社会的意味を持っているのかは、二の次にしてしまいがちだ。
 
つまり、「たくさん売ることが前提→売るに足るものを作るために、自分たちに何ができるのか」と考えるのだ。
 
しかし、それ以外の考え方もあるのではないか。それが、「大義名分のあることをやる」というものだ。
 
これは裏を返せば、「自分たちができること」から出発しないということだ。必要なものは人様から借りればよい。
 
ポルトガルの民話に、「石のスープ」という話がある。かいつまんでまとめると、こういう話だ。
 
ある旅人が、腹を空かせて村にたどりついた。食べ物を恵んでもらおうとするが、どこでも門前払いである。
 
そこで、旅人は一計を案じた。道端の石を拾って磨き、家の戸を叩く。出てきた家人に旅人は言った。「この石を煮ると、おいしいスープができます。鍋と水だけでも貸してもらえませんか?」
 
家人は半信半疑だったが、鍋と水を貸してやった。旅人はしばらく煮込むが、「この石はもう古くなってて、濃いスープになりませんね。塩を入れると、おいしいスープができるのですが」
と言って、家人に塩を持ってこさせた。
 
やがてこの「石のスープ」は近所の興味をあつめ、たくさんの人が見に来た。旅人は「野菜がもうちょっとあればなあ」とか「肉が足りないなあ」とか言って、近所の住人に色々な材料を持ってこさせた。
 
そうやってグツグツ煮込むうちに、本当においしいスープができてしまった。旅人はもちろんのこと、近所じゅう皆で舌鼓を打った。最後に、もとの石だけが残った。「その石はどうするのですか?」と訊かれた旅人は、「またおいしいスープを作るために持っていきますよ」と石を拾い上げ、旅立っていった。
 
・・・ざっとこんな話だ。正直始めて読んだときは、「ああ旅人が上手く善良な村人たちをだましたんだなあ」くらいにしか思わなかった。しかし今思い出してみると、この話は「みんなで協力して何かをする」ということに関して、色々と示唆深い話だと思う。
 
この話の一番のポイントは、たしかに材料は各人の家にあったのだが、「石」が登場するまでは結局スープは作られなかったということだ。石が無かったら、スープは永遠に作られなかっただろう。
 
石は石に過ぎない。物理的に言えば、石を煮込むとおいしいスープになるなんてことはあり得ない。しかし石が材料動員のためのきっかけとして機能したことで、さまざまな材料が集められ、結果的においしいスープができた。
 
つまり石自体には本来何の意味もないのだが、みんなが「この石には意味がある」と思うことによって本当に「意味」として予言された通りの結果が生じてしまうのだ。自己成就的予言である。
 
この「石」というのが、僕らにとっての「名分」だ。名分によって「材料」を集められれば、本当に名分通りの結果が実現できるはずだ。逆に名分がなければ、いくら「材料」があっても「スープ」にはならない。この状況は、「自分たちができること」からスタートしてしまう考え方に対応するだろう。材料がスープを生み出すのではなく、スープを生み出したのはあくまで石なのだ。
 
大義名分のあることであれば、協力してくれる人はきっといるはずだ。それにやっている方も気持ちがいい。ワクワクする。やる側にとっても、協力する側にとっても、買う側にとっても、「名分」があったほうが気分がいい。できたスープは独り占めせず、皆で分け合うのだ。石はきっかけに過ぎないのだから。
 
ならば僕らがまずすべきことは、自分たちがモチベートされて、しかも赤の他人であっても共感してくれるような「名分」を磨き上げて作ることだ。ただ頭で考えるだけでは仕方がないので、必要な人に話を聞いたり、調べ物をして肉付けをすることも必要だろう。
 
そのために、次のような人に話を聞いてみようと思っている。
 
・商品開発の仕事をしている方
・小さな子を持つ親である方
・文具や工具のオタクのような方
・ものづくりを趣味にしており、文具や工具をよく使う方
ベンチャー支援をしていたことのある方
・デザイナーの方
・文具・工具のメーカーで働いていたことのある方
・個人でのものづくりに詳しい方
 
こういう人たちにコンタクトをとって、色々と話を聞いてみるつもりだ。もちろん、自分たちでも計画を練りつつ。さすがにただの「石」ではまずいだろうから、せめて水晶くらいには光らせたいのだ。