basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

ニーズ開拓をせずに、システム化だけが独り歩きする ~過剰システム化の病理~

 知り合いがインターンしている会社の話を聞くと、そこではニーズ開拓をしないのにシステム化がやたらと進んでしまっているようである。その裏にはどんな力学が働いているのだろうか?システム化とニーズ増大の状況の関係を見れば、それがわかりそうだ。
 
 まず前提として、システム化の度合いと必要性は、会社へのニーズの増加の仕方と、それに対する会社の対処方法とによって決まるのではないか。
 
 会社へのニーズが増大すると、システム化の必要性が高まる。システム化をしないことには、増大するニーズに対処できなくなってくるためである。このときの対処法は二通り。
 
①システム化よりニーズ開拓を優先すると、ニーズがさらに増大するのでシステム化 の必要性もさらに高まる。しかし実際のシステム化の度合いは低いままにとどまる。仕事が回らなくならない程度の、最低限のシステム化をする。これが、成長期の企業にとっては最も早く拡大する方法。
 
②一方ニーズ開拓よりシステム化を優先すると、システム化の必要性と実際のシステム化の度合いのギャップが縮まるので、それ以降のシステム化の必要性は減少する。しかし、ニーズ増加のスピードは①よりも遅いので、会社の成長速度も鈍る。ただ①と②のどちらが望ましいかは、経営者と社員の価値観によって違う。成長を追わない年輪経営というスタンスもありうる。あるいは、安全性や信用が第一の製品の場合は、①だと欠陥品をだす危険がある。
 
 一方会社へのニーズが伸び悩んでいると、システム化の必要性は低い。このときの対処法も二通り。
 
③システム化よりニーズ開拓を優先すると、ニーズが少しずつ増えるに従ってシステム化の必要性も高まる。しかしなかなかニーズは増えず、成果が出づらい。大胆な戦略転換をしたりすることもある。この場合は、成果が一時的に減ることもある。ニーズが伸び悩んでいる会社にとっては③が最善策だが、結果が予測しづらい・すぐには現れないせいで実行には勇気がいる。
 
④ニーズ開拓よりシステム化を優先すると、ニーズ増大スピードが必要とする以上のシステム化が行なわれる。ニーズ開拓をしないでそこそこ現状を維持できている企業では、どんどん労力が余ってくる。本質的には前と同じことを繰り返しているだけなので、経験を積み重ねるに従ってどんどんそれを少ない労力でこなせるようになってくるため。するとこの余った労力が、システム化に向かう。システム化が必要以上に進むと、心を入れ替えてニーズ開拓をしようと思っても完成されたシステムに阻まれてしまう。すると社員が萎縮してニーズ開拓に精が出ず、余った労力がさらにシステム化に向かうという悪循環。ニーズが伸び悩んでいる会社にとっては、安易だが最悪の道。
 
この④こそが過剰システム化で、知り合いのインターン先で起こっていた現象ではなかろうか?