basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

ウエアラブル電子顕微鏡は人間の視覚をイノベートするか?

 昨日H君に聞いた話から、さらに考察を進めてみた。
 
 昨日聞いたのは、走査式電子顕微鏡が普及するかもしれないという話。H君いわく、
 
「走査式電子顕微鏡が普及するかもしれない。いまは50cm四方位で1000万円。100万円くらいになれば、だれでも買えるようになるはず。」
 
 彼が想定していた家庭・学校での利用法は、小学生の自由研究の手助けとか、理科実験。あとはマニアの趣味。
 
 しかしパーソナルコンピューターも、昔はまったく同じようなオタクのおもちゃだった。では走査式電子顕微鏡のもっと幅広い利用法はないか?

 それを想像するには、電子顕微鏡の本質的な機能を考えるとよいかもしれない。たとえばコンピュータを「複雑な計算をする機械」ととらえると、その家庭での用法は思いつかない。しかし、「情報処理のための装置」という本質的な機能をとらえると、可能性は無限大だ。同じことが蒸気機関にも言える。「ボイラーとシリンダーで石炭から往復運動を生み出す装置」ではなくて「強力な動力源」が本質。蒸気機関の発明者はジェームズ・ワットだが、その本質を見抜いたマシュー・ボウルトンなしに蒸気機関の普及はあり得なかった。彼はワットを励まし、蒸気機関を商業化した経営管理者的企業家だった。ロンドンの科学技術博物館には、ボウルトンが語った言葉が大きく掲げられている。
 
「閣下、私はまさに世界が待ち望んでいたものを売っているのです。それは動力(パワー)です。」
 
 では電子顕微鏡の本質的な機能は何か?それは「視覚を拡張する装置」ではないか?コンピュータが頭脳を拡張したように、電子顕微鏡は視覚を拡張するのではないか?なんだかんだ言っても現在の私たちは、肉眼でモノを見ている。コンピュータが普及しても、ディスプレイを見ているのはサルだった時代以来使い慣れた肉眼である。しかし電子顕微鏡の小型化が進んでウエアラブルにでもなったら、人間の「視覚」の意味は根本的に変わるのかもしれない。
 
 電子顕微鏡がウエアラブルになるとは信じがたいことかもしれない。しかし、ENIAChttp://ja.wikipedia.org/wiki/ENIAC)時代の科学者に、「2014年にはGoogleがウエアラブルなメガネ型コンピュータを発売する」と言っても笑い飛ばされただろう。ENIACは部屋をまるごと占領していたのである。
 
 メガネ型電子顕微鏡が実用化されたら、いろんなものが見えて楽しそうである。ズームしてウイルスや細菌が見えるようになったら、病気予防に役立つかもしれない。他にもいろんな用途がありそうだ。
 
 そうすると気になるのは、電子顕微鏡を小型化する際のボトルネックだ。コンピュータ小型化のボトルネックは、演算装置と記憶装置だったと思う。ともに、ムーアの法則に従う半導体の劇的な小型化・集積化によって解決された。同様に、電子顕微鏡の小型化のネックは何で、有望な解決策は何なのか?それが知りたい。