basilsの日記

イノベーションについて考察するブログ。その他、アルバイト日誌、感想文、雑感など。

社会科学版の科学コミュニケーター

 近年科学コミュニケーターという仕事が注目されている。これは自然科学と社会の橋渡しを行うものだが、同様の役割が社会科学にも必要ではないか。すなわち、社会科学のコミュニケーターである。
 
 社会科学との付き合い方が広く知られていないことは、社会科学の研究者と一般人の両方にとって不幸なことだと思う。そして社会科学とうまくつきあうには、社会科学の理論がどう作られるか・どんな適用範囲と限界を持っているかを知る必要があるのではないか?
 
 たとえば、社会科学の理論は自然科学と同じく「どんな場合も成り立つ法則」だと思っている人が多いと思う。しかしそんなことはない。「中範囲の理論」という概念が指摘している通り、社会科学の理論は常に適応できる範囲が限定されているのである。
 
 あるいは、社会科学の研究者は概念の定義に偏執的なまでにこだわる。門外漢から見ると、不必要にさえ見えるこだわりぶりである。たとえば、「知識」と「情報」と「データ」という用語を、経営学者は厳密に使い分けるのである。一見専門家の独りよがりに見えるこうしたこだわりにも、ちゃんと意味がある。研究者にとって概念は商売道具であり、これを厳密に定義づけることで初めて仕事が始まるのである。概念の厳密な定義を行わないと、それを何らかの指標に基づいて測定したり、観察したりできない。それはつまり、研究ができないということである。
 
 このような社会科学の生み出されかた、適用範囲、限界を知っておくことが、非研究者が社会科学と正しく付き合っていく上で必要なことではないか。また胡散臭いビジネス書と紙一重の経営学にとっても、社会科学の正しいありようを知ってもらうことが必要だと思う。